[ChatGPT]OpenAIと一緒にイベントのワークショップをしてきました
CX事業本部Consulting部で内製化支援コーチをしているガオリュウこと高柳です。普段から社内外のイベントでワークショップのファシリテーターの相談を受けて実施しています。
金融の常識を覆す:Open AI が描く未来への探究
今回はフィンテック系の勉強会コミュニティから「OpenAI」をテーマにした金融機関限定のイベントをやるのですが、ワークショップしてくれませんか?という依頼を相談いただきました。ChatGPTを含めたOpenAIについての考察がワークのインプットトークで入りますと聞いて、ワークでもChatGPTを使いましょう!と提案してワークショップの設計を運営の方と考えていきました。以下に実際のワークショップでChatGPTとどう一緒にやったかを紹介していきます。
開催したのはこちらのワークショップ。https://fintech-engineer.connpass.com/event/276471/
参加者は金融機関限定となっていたこともあって、ほとんどがスーツ姿の方でした。企業向けの定時後のワークショップでは特に業務との境目をつくることを場づくりとしていているので、今回もワーク中に使うアニメや漫画のガチャポンのトイやフィギュアを入り口に並べて好きなものを一つ持っていってもらいました。そうすることで少し非日常な感じにできます。また初めて会う人たちの集まりなので、席はスクリーンに対して全員が前を向くスクール形式をとって、まずは安心して話が聞ける状態を作りました。
最初に日本マイクロソフトの藤井さんからインプットとなる講演が行われました。藤井さんの話の中で出たキーワードを元に予定していたワークのキーワードも変更しつつ私は話を聞いていたのですが、一般的な話から金融ならではのポイントも話していただけて、勉強になりました。
ChatGPTにグループの5人目として参画してもらう
講演が終わったところで、ワークの時間になってから4人組を作ってもらって、メンバーで協力してワークの場所を準備してもらいました。机を島型にしたり、模造紙とペンを撮りにいってもらったりと役割を得ながら最初の小さなチームビルディングを仕掛けました。場づくりができたところで、最初に手に取ってもらったフィギュアを使ってポジショントークで自己紹介をしてもらいました。具体的には机の上の模造紙の真ん中に「Open AI」と書いてもらい、それを中心に四象限を書いてもらいました、上に「金融の明るい未来」下に「危機感」右側に「社員」、左側に「お客様」と。そこに自分の分身のフィギュアを置いてもらってのテーマに対するポジションを決めた上で自己紹介。これは名刺の肩書きから始めるのでなくて、話し合うための立ち位置を話してもらうことがポイントです。そういうすることで、テーマに対してのグループ内の関係性が構築されます。同じようなことを考えている人か、違う立場から考える人か。
人間の自己紹介が終わったところで、各グループにお願いして、画面を見せても良いPCか、スマホで誰か一人にChatGPTを開いてもらえる人を決めてもらいました。参加者全員がOpen AIに触れることで技術への期待感を持ってもらう意図です。(会場には専用のWifiがあったのでそこに繋いでもらえるようにしました。)イベントのテーマだったこともあり、すでにアカウント登録をしている人もいて、時間かかるかなと思っていた5人目は問題なく席につくことができました。最初のChatGPTの自己紹介がわりに「OpenAIが金融業にどのような明るい未来を作るのか教えてください」と各グループで入力してもらいました。参加者全員が一つのPCを興味深く集中して見ている姿を見て良い場になりそうと思い、スマホのチームはスマホの持ち主が読み上げてあげていて、それも一つの形だなと思いました。
最初のワークは金融業界におけるOpen AIの未来についてアイデア出しをしてもらいました。すでにChatGPTが最初の意見を言ってくれているので、それを付箋に書き取って、ポジショントーク使った模造紙の四象限にプロットしてもらうところからスタート。そこに各自の考えるアイデアを付箋で書き出していく。今回の主催者から依頼された目的の一つに「わちゃわちゃと語り合える」というのがあったので、アイデア出し後には共有することで会話が生まれ、積極的にChatGPTに質問するグループもありました。ただ技術が絡む勉強会のあるあるかもしれませんが、「知識差」はでてしまうこともあり、対話としてなりたちずらく、有識者から話を聞くという形の時間もありました。そこは参加者の期待として有益な情報を得ると言うのもあると思ったので、あまり介入せずにグループに任せました。起点となる問いはChatGPTを介して行おうと考えていたところもあります。(実はこの試みはあまり上手くファシリテートできなかったと後からふりかえりましたが)
ChatGPTとのアイデア出しワークの効果と誤算
アイデア出しは四象限の全てを埋めることで発散を促して、どうしても出てこない時はChatGPTに聞いてみてくださいという促しをしました。しかしここでファシリテーターとしては誤算があって、ChatGPTとのやりとりが楽しくて、自分たちのアイデア出しよりもAIとのコミュニケーションが中心になってしまったり、OpenAIを使うことで感じるリスクや今後考えなければいけない観点などに興味が行ってしまい、アイデア出しから話がそれていくグループもありました。そのあたりも今回は参加者がしたい行動が起きていると考えて、介入はせず、四象限の全方位を考えていってほしい=いろんな角度でOpen AIについて考えてほしいということだを伝えていきました。そのまま話しているグループもありましたし、多角的に考えようとしてくれたグループもありましたが、参加者の思考はいろいろ動いていたと思います。自分のファシリテーションは場に委ねるタイプで、参加者の思考が止まっていたり、なにかが妨げになっている時以外はなるべく参加者の思うままに動いてもらうと良いかなと。グループメンバー全員が思考しているようだったので(一人が暴走とか、別のメンバーがつらそうにしているとかでもなさそうだなと)、場として成り立っていると判断していました。人間のファシリテーターがするグループへの問いとは違って、AIとの向き合い方はまだ確立されていないところもあって、新鮮にChatGPTとのコミュニケーションを楽しんでいたと思います。
個人ワークに移していく
ChatGPTとのやりとりが多くなりがちだったこともありますが、アイデア出し後の休憩を挟んで行ってもらったのはアイデアの中から自分なりの考えをまとめるワーク。普通のアイデア出しとは違う、ChatGPTとの相乗効果を狙った、この先の未来として「自分のOpen AIとの向き合い方」を考えてもらいました。この時点でChatGPTとはテキストコミュニケーションをしているなと思ったので、A4の紙を配って、考えを言語化して言葉で書いてもらいました。それをChatGPTに入力して、どうすればよいか?を聞いて、問いを作ってもらおうと考えたのですが、残り時間との兼ね合いでやりませんでした。個人の向き合い方がでたところでグループ内でシェアして、最後のワークへ。
勉強会を活用する
最後のワークは、この勉強会を使って学びたいこと、実験したいことを考えて企画案を考えてもらいました。金融系の集まりということもあって、技術的な話を企業に持ち帰って続けるのは難しいということや、主催の勉強会コミュニティを学習の場として使ってもらえるとよいというのもあって、そんな問いにしました。ここも個人で考えてもらうことで、自分事にしてもらいたかったという狙いもあります。主催の方からも各自が自分がOpenAIの世界を使っていけるように今後の自分の学ぶものを見つけてほしいというところに応えたものでした。
勉強会のふりかえりとグループ間のシェアタイム
個人で考えた企画をグループでまとめて企画書にしてもらう予定でしたが、ここも時間の問題と勉強会の終わりの状態としては、思ったよりもChatGPTとのやりとりでのざわめいた感じがずっと残っていたので、2分間の沈黙で勉強会で学べた事、考えた事を内省してもらいました。そして、グループ内でも共有してもらいましたが、ここまでの流れでグループを越えたシェアはしていなかったので、最後に別グループの人たち同士で組んでもらって、共有をしてもらいました。和やかな感じでそのまま閉会となりました。
今回やってみた感想になりますが、ワークショップにおけるOpen AIのもたらした効果を2つ、危機感を1つサマリーとして挙げておきます。
ChatGPTから傾聴が始まる
今回はPCやスマホでChatGPTからの回答を共有したので、PCの場合は「読む」行為が発生することと、スマホの場合はChatGPTの代わりに読み上げをすることで参加者がしっかり全部聴こうしていました。これは新技術への興味だったとも言えますが、人ではない「モノ」からの多数の人へ向けた言葉は良い悪いというのではなく「集中」を生むと実感しました。盛り上がった話の中では時にファシリテーターの言葉は届きづらいのですが、ChatGPTの言葉に耳を傾けるという状態は発生していました。
ChatGPTがテーブルファシリテーターになる
参加者としてChatGPTに参画してもらうと、グループの中での言葉が蓄積されて、グループに合った言葉を返してくれることがあります。少し違っていてもそれはそれで「わかってないなぁ〜w」と参加者がある意味、否定することができる。人間の言葉ではないからこその「選択できる幅」があるのだと思いました。人間のファシリテーターの言葉はそれよりは強制力を持つ気がしました。「介入」という言い方にも現れているとも思いました。まぁ、「介入」なのか「作用」」なのかというのはファシリテーターのスタイルによる部分もあるかもですが。グループの紡いだ言葉をChatGPTが入力として受け取れたなら、グループ事のファシリテートができるかもしれないなと。
すごい技術には依存が生まれる
そして最後の話はリスクかもしれませんが、現時点では新技術への熱狂と「これはすごい!」というものが、こんなにも人を惹きつけるものなのだと思いました。しっかりとした盛り上がりを作れるという意味でもありますし、ワークの時の設計ではその熱量も少し考えておきたいと思ったのでした。
今回、相談から始まったChatGPTを使った試みでしたが、今後もいろいろとOpen AIを使った場づくりはやっていこうと思います。それだけ人とAIとの関わりは興味深く、面白いものでした!
場を与えてくださった運営の方に感謝。そして、ワークに向き合ってくださった参加者の方にも。